【本】遺跡としての五稜郭と復元された奉行所を凝視する眼

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本書については、既に一昨年kitra氏による紹介があるが、今回の「箱館奉行所」復元オープンを機会に再度とりあげる。

 

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五稜郭-幕末対外政策の北の拠点

田原義信

同成社

2008年5月

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2010年7月29日、真夏の一大ページェント、函館港祭りの開催を数日後に控えた日に4年の工事を終えて箱館奉行所が五稜郭の真ん中に明治初頭の解体以来140年ぶりに、その完成した姿を現した。

1,000平方メートルの木造建築は北海道では最大。「同じ場所に・同じ材料で・同じ工法で」を合言葉に全国から集められた宮大工や伝統技術をもつ工人たちが集まって作り上げた復元建築。

工事の苦労の一端をうかがう機会があったが、そのときに最も印象に残ったのは次の言葉。

 今回は残された図面と発掘調査の結果などから、当時の寸法、材料、工法を推定しながら進めると  いう格別な難しさもあったが、やってみて判ったことは、140年以上も前に3,000平方メートル(今回の復元規模の約3倍)もの大建築をなんと3年で仕上げていることの凄さです。現代の先端的な重機などがない時代ですから。当時の技術力と工事管理能力のレベルの高さは本当に素晴らしかったということです。

一方で、こうした歴史的遺産を文献と発掘記録から読み解き、かつ実際に復元工事を国に認めさせ、かつ具体的に推進する(20年の歳月がかかっている!)までの関係者の熱意と努力にも思いを致すことが大事であろう。特に復元の範囲が当初の全面復元から1/3まで縮小せざるをえなかった経緯は著者の無念の思いも(さりげなくだが)伝わって、もっとも強く印象に残る部分。

本書の著者、田原氏(現在は市立函館博物館長)は1983年から始まった遺構調査に文化財課のスタッフとして加わって以来、一貫して「五稜郭・奉行所」の調査・復元計画の中心的役割を担ってきた。それだけに本書には五稜郭・奉行所の役割とその歴史についての解説、そして遺跡調査・文献調査から、復元にいたる全過程が余すことなく要領よくまとめられている。

(部分復元とはいえ)奉行所が地上に姿を現したいまこそ、あらためて「五稜郭と奉行所」を正確に理解するには好適の書。奉行所の向かいのお休処の売店に、書籍としては唯一並べられているのも当然だろう。いまのところ、簡単なパンフレット以外にはこの奉行所の「公式」ガイドブックが準備されていないので、事実上唯一のガイドブックとしても重宝。

本書では2006年8月の工事開始時点までをカバーしたところで筆が措かれているが、次は、復元工事の実際の工程、そして復元以降の(完全復元までの)展望と課題も併せて論じた続刊に期待するところは大きい。







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