日露関係とサハリン島~幕末明治初年の領土問題
秋月俊幸
筑摩書房
1994年
=================
最近サハリン(樺太)についての著作を渉猟中。
松浦武四郎の事績を調べている途中で、偶然手にしたこの本「日ロ関係とサハリン島」に感動した。
かなり分厚い学術書なのだが、体系的な著作の極めて少ない、徳川幕府中期から明治までの日本とサハリン(樺太)の関わりを論じた好著。日本政府・外務省の公式見解ではいまだに「帰属未定」とされるサハリンに関わる日本とロシアの交渉と対立の歴史がつづられている。
1854年に勃発したロシア皇帝からのの「サハリン占領」計画とそれへの対応(軍事衝突一歩手前)、そして明治初期の「樺太・千島交換条約」交渉の舞台裏。さながら良質のミステリー小説を読むような劇的な展開が時折あらわれる。
著者は北方史の泰斗である秋月俊幸氏。
なお、本書には随所に「箱館奉行所」が登場する。巻末の事項索引によれば合計20回。ロシア側の主要登場人物、プチャーチン(35回)、ムラヴィヨフ(25回)に次ぐ多さ。樺太経営についていかに箱館奉行所の存在が大きかったかを物語る。もちろん箱館奉行を務めた、堀、村垣、小出、竹内、杉浦らも頻繁に登場する。
1854年の再置以来、箱館奉行の役割の中でも外交面で最重要の課題がこのサハリン問題であったことが十分に窺える。
1994年発行の本書、残念ながら現在は絶版。他に類書もないのだから何とか復刊していただきたいものだ。(函館市中央図書館は所蔵)
なお、同氏には「日本北辺の探検と地図の歴史」という大部の著作もある。こちらも北海道・樺太・千島を含むおおきなエリアの歴史理解に必須の文献。

コメントする