エッセイ集の最近のブログ記事

kawa.jpg

小説を、映画を、鉄道が走る

川本三郎

集英社

2011.11

=================

映画評論家・川本三郎が、鉄道を素材にした映画評の集大成を刊行。

北海道関係では、飢餓海峡と海炭市叙景がそれぞれ一章をなしているが、関連の話題はすこぶる豊富で、他の映画評や小説、ミステリーなど川本三郎の博覧強記が存分に発揮される。

白眉は「飢餓海峡」に登場する下北半島の川内森林鉄道と岩内から函館本線に連絡していた岩幌線。いずれも廃線だが、川本の筆によってその過去の姿が鮮やかに描き起こされる。

1980年代から多くの鉄道線路が廃止されていく。いまや大正時代の線路網にまで後退しているというのも驚き。廃線の増加と道内に過疎地が増えるのとは軌を一にしている。

映画ファン・鉄道ファン限らず、広い層から賞賛を受けそうな佳作。


ボローニャ紀行

井上ひさし

文春文庫

2010年3月

=========

Bologna.jpg

 

井上ひさしには珍しい(?)外国の紀行エッセイ。独特のユーモアあふれる筆致の中に、イタリア北部内陸の古い歴史を持つ小都市(人口38万)がいかにして、その歴史的遺産を守りつつ、精密機械を中心とした有数の工業都市として独自の発展を遂げてきたかを明快に分析し、語る。

borogna.JPG

地図で見ると北イタリアの工業地帯とローマなど中南部との交通の結節点(ハブ)に位置することがわかる)

 

井上氏は年少にしてカトリック系の孤児施設に入り、尊敬する宣教師の属するドメニコ会の本拠のひとつボローニャは長らく憧憬の地であったという。そのボローニャに念願の訪問を果たしたのが2003年、井上氏は市内の各地を訪ね歩き、関係者に精力的な取材をしている。インタビュー相手の描写いかにも井上らしい。例えば「山崎努さんを空気ポンプで膨らませたような」巨漢の劇場長。「映画に出ていたら体格以外ではソフィアローレンを凌ぐだろうことは確か」な女性図書館長、という具合。

そこに描き出されたのは、地方自治の典型例、伝統的景観の徹底保全、社会的企業と伝統的職人型企業の発展など、演劇・音楽などの活発な展開など、地方都市の独自性を生かした独創的な「都市のデザイン」の姿である。

その例は旧市街の歴史的建造物の再開発・活用に雄弁に現れている。

路線バスの巨大な車庫→ホームレスの更生施設

貴族の館→保健所、保育所、集会所、劇場

女子修道院→ヨーロッパ一の女性図書館

証券取引所→児童図書館、一般図書館

特に凄いのが、広大な王立煙草工場(煉瓦2階建工場棟・煙草倉庫・事務所)を改修してを世界一の映像貯蔵センター(CINETECA:映画フィルムの収集と劣化したフィルムを再生:DVD化)と3つの映画館、3つの図書館、大学の芸術学部の実習スタジオなどにしてしまったことだ。

CINETECA.JPG

 

この町のボローニャ大学はヨーロッパ最古の大学として有名、市内にはランボルギーニ(自動車)やテストーニ(靴)などの著名企業、多数の精密機械(特に包装機械が有名)がある。

次の海外旅行ではボローニャで美味しいパスタが食べたくなるような、一般の旅行書より格段に面白い魅力がふんだんの本でした。

 

 

 

 

 

 

世の中には短期観光客向けのガイド本は数多あるが、この本のように、都市全体をあたかも<博物館>に見立てて、その記憶を掘り起こしたエッセイは珍しい。先年スペイン・グラナダに行った直前にに買い求め、第5章の「博物館に住むーグラナダの夢」(アルハンブラ物語の作者アーヴィングを中心に論じたくだり)を読んでいたが、今回あらためて他の章も読み終わった。バルセロナ、ドレスデン、エディンバラなどヨーロッパの都市がたどってきた過去を、その街に絡んだ作家や建築家の眼を通して物語る文章は渋く味わい深い。函館もこうした「物語」が紡げそうな(残念ながらまだない)気がするのだが。


 

アイム・ファイン

浅田次郎

小学館

2010.2

==========

浅田次郎の最新エッセイ。JALの機内誌、SkyWard連載の旅にまつわるエッセイ40編を単行本化。前作「つばさよつばさ」に次ぐ第2弾というわけだ。


わがエトロフわが夕張

佐々木譲

北海道新聞社


佐々木譲初のエッセイ集という新聞での宣伝。それにしてもエトロフは「北方領土問題」という政治向き、夕張となれば「語られ尽くした」感があってやや敬遠していたのは事実。

北海道新聞函館支社報道部編
北海道新聞社
 2003.2

函館「街の物語」113編、文章と挿画のベストマッチ

北海道新聞の地域情報版に連載された函館の街の物語113編が本になった。一編ごとに地元画家によるスケッチ風の挿画が入り、そこで生業を営む300人が語る街の過去と現在を記者が丹念に聞き書きをしてまとめたもの。

 

宇江佐 真理著
出版 : PHP研究所
発行年月 : 2007.12


函館在住の時代小説作家、宇江佐真理さんの初!のエッセイ集。

Weather Reportという著名な天気予報サービスの名前をもじったこの書の題名だが、そもそも宇江佐というペンネームがWeather(ウェザー)にちなんだものだったという事実も本書の中で明らかにされる。

執筆 : kitora 

浅田次郎がJALの機内誌に連載したエッセイの単行本化。 なぜ「函館」本か?というと、同氏がなんと「函館の夜景」+「函館競馬」の大ファンで、そのために一章を割いているから。

 

つばさよつばさ
浅田次郎
小学館
2007.10
本の紹介@BK1


 ご存知「鉄道員(ぽっぽや)」で数多の男女を泣かせた当代きって(とは私の評)のものかき名手、浅田次郎氏の最新刊。「つばさ」とは翼のこと。4年間にわたってJALの機内誌Skywardに連載した同名のエッセイが単行本になったのである。

1

最新記事の写真