小説の最近のブログ記事

 

ウラジオストクから来た女

  ~函館水上警察

高城高

東京創元社

2010年9月

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明治の函館を舞台に、水上警察署を中核に活動する男たちを描くハードボイルド作家高城高著の「函館水上警察」シリーズ第2弾は「ウラジオストクから来た女」。

明治20年代の函館港にはロシアからの船舶の往来も盛ん。ウラジオストクからやってきたロシア籍をもつ謎の美女が街を闊歩。そして周囲に巻き起こる事件。明治初頭の大火のどさくさに紛れて起こった夫婦殺人事件と、ひとり生き残った娘のその後の流転の生涯。函館とウラジオストックを結ぶ糸が当時の北方海域の交易の有様を交えて描写されていく。

当時の函館の港から元町・弁天界隈の風景と人情を活写する筆者の腕のさえは前作同様。現在の函館に生きる私たちに100年前の函館を見せてくれる。

著者あとがきによれば「函館水上警察」シリーズは今回で完結とか。残念。でも他のテーマで是非この前後の時代の函館を書き綴ってほしいものだ。

ちなみに表紙カバーの絵が前回に続きすばらしい。函館の往時の町並みを巧みに描きこんでいる。

 

 

 

終わらざる夏

浅田次郎

集英社

2010/7刊

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数年前浅田次郎氏の講演会が函館で開催されたとき、「私は今、敗戦直後の占守(シムシュ)島(北千島でもっともソ連領カムチャッカ半島に近い島)での日ソの戦争について書いています。実はそこに函館高女の卒業生数百人が徴用されていまして。ソ連の攻撃直前にその400人が決死の脱出をはかりました」という話があった。

 

 

存在という名のダンス (上・下)

大崎善生

角川書店

2010.1

 

 

不思議な雰囲気の本だ。断然荒っぽく要約すれば、特異な能力をもった少年のスリリングな一人旅の物語。道程は岩見沢から室蘭を経て、最終目的地が函館。

その函館に瀕死の父親がおり、孤児収容施設から脱走した宗太という少年は、施設からの追っ手をかわしつつ、一路徒歩で函館を目指す。(最後は密かにバスに便乗するが)。

ハーメルンの笛吹き男(連れ去られる130人の子供)そしてホロコーストのユダヤ人殺戮、大戦末期のサハリンでのソ連軍の蛮行、などが通奏低音になって、現代の北海道に新たな暴力と悲劇が起こる。

 

函館はあくまでも脱走した少年の「最終目的」地。函館に関する直接の叙述は多くはなく、あくまでも遠くから(特に室蘭方面から遥かに)の目線で描かれることの多い函館。

北海道の中では、本州から渡ってきての「中継点」、あるいは新たな旅立ちの「出発点」として描かれることの多い函館が、道央方面からの「最終目的地」として書かれるという視点が新鮮だ。特に室蘭を過ぎたあたりで噴火湾の向こう側に見えてくる駒ケ岳の姿の叙述は美しく感動的。

著者の大崎善生氏は札幌出身で将棋雑誌の編集長から作家になった人。奥さんは碁士。フィクションもノンフィクションもこなす多彩な作家で、従来は恋愛物が多かったのだが、これは違うジャンルという。

ファンタジー・ホラーともいうべきか、ともかく不思議な本だ。異質な「旅行記」ともいえるかもしれない。たまにはまったく肩の力を抜いて、実利からも遠ざかった読書をしたいという気分には適う本かも知れない。

 

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閉ざされて

篠田真由美

角川書店

2010/1/30


アラミスと呼ばれた女

宇江佐真理

出版社: 講談社

2009/4
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函館水上警察

高城高

東京創元社

2009.8

 


 

函館出身の「幻のハードボイルド作家」高城高の新作。明治20年代の函館をバックに水上署(後に西警、現在は臨海研究所)が担当する港がらみの事件を扱っている。

女の海溝 トネ・ミルンの青春

森本 貞子

文芸春秋社

1981年


後に地質学者ミルンの妻となる堀川トネは、函館で真宗大谷派の寺(願乗寺)の娘として生まれた。父親は明治初期の函館を貫通する水路(願乗寺川)を開いた、堀川乗経。


逝きし世の面影

渡辺京二

平凡社ライブラリー(ソフトカバー)

2005/9

身分制と貧困に縛られた暗黒の封建時代=江戸時代というイメージをみごとにひっくりかえしてみせてくれる、気鋭の歴史評論家、渡辺京二。1998年に九州の小出版社から初版発行して以来、じわっと売れ続け、2005年には平凡社から軽装版ででることになった。

     

 

映画化へ向けて活動開始…佐藤泰志(函館出身)の「海炭市叙景」 を

函館出身の作家、故佐藤泰志の代表作「海炭市叙景」の映画化に向けて市民有志が活動を開始した。 佐藤泰志は1948年生、函館西高校卒業、「きみの鳥はうたえる」や「そこのみにて光り輝く」などで5回芥川賞候補となった。1990年東京都内で自死(42歳)

蘆火野(あしびの)

船山馨

角川文庫(上下2巻) (1978)

 

箱館戦争を舞台に維新の動乱に巻き込まれた若い男女の行き様を描いた長編。当時の箱館の雰囲気もよくうかがえる。

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