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閃け!棋士に挑むコンピュータ

田中徹&難波美帆

梧桐書院

2011年2月

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「閃け!棋士に挑むコンピュータ」(田中徹&難波美帆共著)読了
これがなぜ「ハコダテ本」かというと、立派な理由があるのです。
まず、著者のひとり、北海道新聞の田中記者。あとがきにも書いているが数年前まで函館支社勤務で筆者もお付き合いがありました。そして、この女流棋士トップに勝利したコンピュータ「あから」を支えた情報処理学会のプロジェクトチームのプロジェクトを主導したのが公立はこだて未来大の中島学長と松原教授。
最近は歴史物と小説ばかりの筆者にとって、久方ぶりの科学系の本だったが、一気に読めた。特に、女流棋士トップの清水市代対将棋対局用コンピュータ「あから」の対決の実況場面の記述に満ちている緊迫感は将棋に門外漢の筆者にもよく伝わった。一定のルールの中で行われるチェスや将棋でコンピュータでトップレベルのプロとの対局を実現するというのは人工知能の専門研究者にとっては夢の舞台。
それにしても、こういう将棋とコンピュータという、専門分野での関係者へのインタビューをこなした著者ふたりの勉強量も凄いし、一般向けにここまで丁寧に書き起こす「文才」にも感嘆。「科学の未来に希望」を感じさせる好著。若い人たちにたくさん読んでほしい。
コンピュータはあらゆる指し手の先を読み、あるいは過去の将棋対局のデータ(棋譜)を探索し、膨大な演算の結果指し手を決めるという。人工知能の専門家多数と4つの強力な将棋ソフトに東大の169台のコンピュータを協働させるという大掛かりな仕掛に惜敗とはいえ真っ向から亙りあった清水棋士に「人間の英知」の底知れぬ実力を見た。そして、対局を通じてコンピュータの底知れぬ未来へのシンパシーを育んでいったという清水さんの言葉にも大いに感銘。
 
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