奉行所オープン記念講演会で

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30日、前日の箱館奉行所オープンを記念しての講演会・フォーラムが開催されました。場所は図書館。事前申し込み制でしたが、約150の席はほとんど満席で関心の高さをうかがわせました。

筆者は前半の平井聖(元東京工業大学教授、建築史)氏の講演のみ聴講。

箱館奉行所の復元には20年以上も前から主導的立場で関わってこられた方だけに、今回の奉行所復元の意義と課題についてのお話は大変示唆に富むものであった。

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平井先生の主な論点

箱館奉行所の今回の「復元」はこれで完成=終わりではない。関係者の口から再三「復元工事完成」と言いう言葉が出ているが、私の認識は違う。引き続き古文書の発掘、解明などを進め、第2次、第3次の復元工事を進めてほしい。

①奉行所本庁舎でも復元したのは当時の規模の1/3。当時の「裁判所」の重要な役割のひとつであった「お白洲」が復元対象から外れたのは残念だ。是非全体の復元を進めていってほしい。
(建築基準法上の制限がよくいわれるが、文化財級の建築物には例外が可能というのが私の見解。粘り強く文化庁と協議すべき)

②基礎部分の遺構保護を名目に、建物は人工地盤上に建っている。そのため本来の高さより約50cm建物かさ上げされている。周囲の土塁などの高さは当時のままなので、バランスが崩れているのは残念。また立木が茂って、(当時は見えたと思われる)土塁の外からの奉行所の太鼓櫓などが見えない。一部でも見通せる箇所を作るのが望ましい。(長崎の復元奉行所の例でやはり嵩上げで玄関部分に不釣り合いが生じた例を紹介)

③内部の仕様も、文化庁の「記録にないことは白紙」の方針のため、襖や壁には一切文様や襖絵などが認められなかった。しかし、当時のこうした建物の内部装飾はかなり華麗であった筈(他の奉行所や城の例などを紹介、NHK大河ドラマ篤姫の場面も)、他の類似例なども参考に何らかの再現をするべきであった。(実際に熊本城本丸御殿でも一部の襖絵ではそうした「復元」を試みている。)プロジェクターなどで再現してみるのも一考だ。

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(NHKドラマ篤姫、背後の壁に注目、なお平井先生はこのドラマの考証も)

④建物の復元にとどまらず、内部を活用して当時の様子をうまく伝えていく工夫が求められる。子供たちの関心を持ってもらう上でも検討してほしい。 長崎歴史博物館内の復元「奉行所」のお白洲では、当時の様子を再現(お白洲劇場)している。こういう事例が参考になる。(なお、長崎奉行所は「史跡」に指定されていないのである程度自由にできるということはある)

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(長崎奉行所のお白洲)

締めくくりに、平井先生は、こうも述べられた。

函館は大変好きな町で、何度も足を運んでいるし、特に函館山のふもとの街並みは、和洋折衷住宅などが独特の雰囲気を出している。だが、この20年でも相当数の古い建物が失われているのは残念だ。

80歳という高齢にもかかわらず、非常に明快な話しぶりと論旨の判りやすさで素晴らしい講演でした。









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